健康情報

乳幼児突然死症候群HEALTHCARE

厚生中央病院病院長 河島 尚志 監修

赤ちゃんの睡眠時の危険と対策

赤ちゃんの不慮の事故は睡眠時に発生することが多く、小さな命を守るため家庭での対策が求められています。詳しいお話を、小児科・思春期科の河島先生に伺いました。

赤ちゃんの睡眠中に潜む危険とは

睡眠中の赤ちゃんの事故や病気が今、問題視されています。乳幼児突然死症候群、ベッドからの転落、タオルケットによる窒息事故など、静かに眠っている赤ちゃんは実は危険と隣合わせの状況にあるのです。

睡眠中の危険因子として、まず最初に知っておきたい病気が「乳幼児突然死症候群」です。これは通称SIDSと呼ばれており、予兆もなく赤ちゃんが亡くなる病気です。SIDSは乳幼児の死亡原因の第4位となっており、世界各国で様々な研究調査がなされています。しかし、いまだ原因の解明には至っておらず、予防法も確立していないのが現状です。

赤ちゃんの睡眠時に多く発生する事故としては、ベビーベッドからの転落事故やベッドの下に収納が付いているタイプのベビーベッドで、収納扉のロックが不十分であったために隙間に赤ちゃんが挟まれる事故、タオルケットや布団などによる就寝時の窒息事故が挙げられます。転落事故は平成22年から6年半でその発生件数は151件、窒息事故は平成25年から5年間で160件発生しており、不慮の事故死全体の32%を占めています。

乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症のリスクを抑えるために

SIDSについて、日本はもとより世界各国で様々な調査研究が行われていますが、原因の解明には至っていません。そのため、予防方法が確立していないのが現状です。
しかし、これまでの研究などから、次の3つのポイントに留意すれば、SIDS発症の危険性を低くするというデータが得られています。

1歳になるまでは、寝かせる時は仰向けに寝かせる
SIDS は、うつ伏せ、仰向けのどちらでも発症していますが、うつ伏せに寝かせたときのほうがSIDS の発症率が高いことが分かっています。なるべく赤ちゃんの顔が見える仰向けに寝かせましょう。
なるべく母乳で育てる
母乳で育てることが赤ちゃんにとって、いろいろな点でよいことはよく知られています。母乳で育てられている赤ちゃんのほうがSIDSの発症率が低いことが分かっています。なるべく母乳で育てましょう。
たばこはやめる
たばこはSIDS発生の大きな危険因子とみられています。
妊婦自身の喫煙はもちろん、妊婦や赤ちゃんのそばでの喫煙はやめましょう。
日ごろから身近な人たちにも理解と協力を求めましょう。
出典:厚生労働省「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」

保育施設では預かり初期にSIDS発生の危険性

SIDSの危険性については、家庭だけでなく乳幼児を預かる保育施設でも問題視されています。保育施設で発生したSIDSについて聞き取り調査を行った結果、預かり初期での発生が顕著に多いことが明らかになりました。さらに預かり初めの1週間に3分の1が発症、そのうち2分の1が預かり初日にSIDS発症の危険度が高いことが報告されました。

<調査について>
保育施設でのSIDS発症者31名を調査。そのうち17名が1か月以内での発症であったことが判明。そして初日は以降の危険度の133倍のリスクがあることが分かりました。

初日…4名(12.9%)
2日目~1週間以内…5名(16.1%)
2週間目~1か月以内…8名(25.8%)
1か月~2か月以内…4名(12.9%)
2か月~1年以内…10名

1日あたりのSIDS発生危険度(SIDS発症人数÷該当日数)
参考:「小児保健研究」2006年第65巻第6号 836-839「保育預かり初期のストレスとSIDS危険因子の関係について」

悲しい事故を防ぐために私たちのできることは

睡眠中の赤ちゃんの異常に気づいた際は、いち早く救急車を要請し、蘇生措置を行うことが求められます。そのため保護者が常に赤ちゃんの様子を見守ることが理想ですが、24時間ずっと赤ちゃんを見守るのは現実的にとても難しいでしょう。
赤ちゃんの悲しい事故を少しでも減らすために、保育者はまずは家庭の育児環境を整えることが求められています。赤ちゃんの安全を第一に考えた育児環境は、保護者のストレス軽減や休息時間の創出にもつながります。赤ちゃんの体動を感知する体動センサ等の医療機器も活用し、少しでも安心できる時間をつくるようにしましょう。

乳児用体動センサー
ベビーアラーム E-201

パネルに内蔵された高性能センサで、睡眠中の赤ちゃんの小さな体動を感知。もしも20秒間体動が感知できない場合は、アラームでお知らせします。